- 須走ルートと御殿場ルート、プリンスルートを下山する人は登山スパッツはほぼ必須
- ロング丈のスパッツが用意するのがおすすめ
- ゴアテックスなど防水透湿素材がおすすめ
- S、M、L、とサイズがあるので自分の靴にあったものを選ぶ
- 実売価格:アウトドアメーカー製4000円程度~、格安スパッツ1000円程度~
以下、詳しく解説しています。
目次
登山用のスパッツとは?
登山スパッツ(レインスパッツ・ゲイターとも言われる)は、靴とズボンの隙間を埋める登山装備です。ズボンの裾汚れ防止や靴内部への砂・石・雨の侵入を防ぎます。
この登山スパッツは、山によっては全く使わないこともある補助的な装備ですが、富士山の場合は登山ルートによっては非常に重要な装備となってきます。
登山スパッツの役割・機能
スパッツ(レインスパッツ)の役割は、
- パンツ(ズボン)の裾が汚れることを防ぐ
- 雨が靴の中に進入するのを防ぐ
- 靴の中に小石が入ることを防ぐ
です。
パンツ(ズボン)の裾が汚れる・濡れることを防ぐ
登山道を歩いていると、晴天が続いた場合は砂埃で汚れ、雨が降った場合は泥はねでパンツの裾が汚れることがあるのですが、登山スパッツを装着することにより、保護することができます。
雨が靴の中に進入するのを防ぐ
レインパンツの内側に登山スパッツを着けることで、雨が靴の内部に進入するのを防ぎます。
登山道の傾斜が強い場所は、ひざを大きく屈曲させることになるため、レインパンツの裾が防水性のある登山靴の上を超えてしまうことがあります。
大雨の北岳登山での写真
写真のようにレインパンツの内側に登山スパッツを着けることで、雨が靴の内部に進入するのを防ぎます。富士山でも登山ルートによってはこのような大きな傾斜の場所がいくつかあります。因みに、レインパンツの膝が立体裁断になっている場合は、このレインパンツの裾が上がり幅が小さくなり、よほどの傾斜でなければ登山スパッツが不要になる場合もあります。
靴の中に小石が入ることを防ぐ
登山中に登山靴の中に砂利が入ってしまうことがありますが、登山スパッツを着用することで防ぐことができます。
私はさまざまな山を登ってきていますが、富士山においてはこの現象は顕著に見られ、重要な内容なので、次の章で詳しく解説します。
富士登山における登山スパッツ
富士登山では特定の下山道で登山スパッツはほぼ必須です!
富士山には、4つの登山ルート(吉田ルート、須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルート)がありますが、吉田ルート、須走ルート、御殿場ルートは上りと下りが途中から下山道として別ルートになります。
その中でも、
- 須走ルートの七合目からの下山道の砂走り
- 御殿場ルートの七合目からの下山道の大砂走り
- 御殿場ルートから宝永火口を抜け、富士宮六合目へ抜ける(通称プリンスルート)
の登山道は、砂利が非常に深く、登山スパッツ無しで下山すると、砂利が何度も登山靴の中に入って、かなり痛い思いをします。
赤い太線部分が砂利が深い場所。クリックすると拡大します。
なぜ砂利道が下山道なのか
来より富士山信仰として、多くの登山者・修行者が富士山に登ってきました。”上りの登山道は、足場がしっかりとして登りやすいルートを選び、下山道は膝への衝撃が非常に緩和される砂利道が使われるようになった”という話を聞いたことがあります。
実際に深い砂利の下山道を下ると、前に出した足が砂利で下にずれるため、まるで天然のクッションの上をふわふわと降りていく感覚になります。
このような砂利道が下山道となっている山は珍しく、この道を下ることがある意味、富士登山の醍醐味ともいえます。特に、御殿場ルートの大砂走りは、名前の通り非常に深く、また横幅の広く開放的な砂利の下山道となっていて、天気が良ければ雄大な自然を眺めながらフワフワと降りていくといった、なんとも贅沢な体験ができる貴重な場所です。
須走ルートの七合目からの下山道の砂走り
須走ルート 砂走りの写真 砂利と大きな石が混在なので転倒注意
須走の下山道はずーーっとこんな感じが続きます。それなりに強靭な脚力も必要ですが、砂利がクッションになり、ダイナミックかつ楽に下山することができます。このときにスパッツとダブルストックで、砂利が靴の中に入ったり、バランス崩すのを予防できます。
御殿場ルートの七合目からの下山道の大砂走り
2017/08/01 御殿場ルートの大砂走り
御殿場ルートの大砂走りは、最初は大きな石が混じっていますが、次第に小さな砂利の割合が増え下山しやすくなります。道も広く、展望も良いため、非常におすすめです。ただ、御殿場ルートは新五合目からの往復だと距離が長く、山小屋数も少ないため登山難易度はどこよりも高いです。
御殿場ルートから宝永火口を抜け、富士宮六合目へ抜ける(通称プリンスルート)
プリンスルートも、宝永火口周辺の砂利が深いので、登山スパッツ無いと、溶岩の尖った小石が登山靴の中にはいってめっちゃ痛いです。
兄がスパッツなしで下山したら・・・
こんなんなりました。。。ハイカットの登山靴にもかかわらず「しばらく歩くと、じゃんじゃん小石と砂が入り込んで痛い」と言っていました。私が事前に兄に、このルートは登山スパッツが必要なことを伝え忘れてたのが原因。(ごめんなさい)
その時のブログ記事はこちら ⇒ https://fuji-climb.com/2015/07/150711-6/
まとめ
登山靴は足との密着度が高いため、小さな石が入り込んだだけでも、足の痛みにつながります。
わざわざ下山中に足をとめるのが面倒なのでそのまま痛みを我慢しても、下山中にず~っとその痛みが続くので結局足をとめて靴から小石を取り出すになります。そのたびに足をとめて、靴を脱ぐのはとても面倒ですし仲間を待たせてしまいます。
- 須走ルートの七合目からの下山道の砂走り
- 御殿場ルートの七合目からの下山道の大砂走り
- 御殿場ルートから宝永火口を抜け、富士宮六合目へ抜ける(通称プリンスルート)
上記のルートを通過する場合は、自分のためにも仲間のためにも登山スパッツの着用を強く推奨します。
登山スパッツの選び方
登山スパッツを選ぶポイントは
- 長さ・丈
- 防水素材
- ジッパー位置
- サイズ
です。
長さ・丈
登山スパッツには、ショート丈とミドル丈とロング丈の3種類あります。
ショート丈とミドル丈のスパッツを靴に装着した場合、上部がふくらはぎの一番太いところ以下の丈になるためずれ落ちやすく、ロング丈がおすすめです。(私はロング丈使ってますが、富士山の砂走りで走っても小石が入ってきた記憶がありません)
そして歩行中にだんだんと下にずり落ちてきます。できれば、ロング丈のスパッツが用意するのがおすすめですが、費用を抑える&軽量化するならショート丈でも小石の侵入を防ぐことができます。ただ、ショートスパッツの場合、スパッツより上のパンツが砂で汚れる可能性あります。
御殿場の大砂走りを下山した後のロングスパッツ。 上まで砂まみれ。
上の写真は、御殿場ルート下山道の大砂走りを下り終えた足元を撮影したものですが、見ての通り、ロングスパッツの上部まで砂がたくさん付着しています。
防水素材
登山メーカーから販売されている登山スパッツはほとんどが高性能の防水透湿素材(ゴアテックスなど)を使われています。価格の安いものの中には、防水性はあるが透湿性の無い素材のものもあります。そういうのは長時間使うと蒸れてきます。
登山で1回しか使わないなら、簡易的な防水のみでも良いと思います。何度も登山で使用する予定ならゴアテックスのものがおすすめです。(その他様々な防水透湿素材ありますが、ゴアテックスより劣化が早く、数年で駄目になるものもあり、基本的にゴアテックスがおすすめです)
私も使ってみてわかったのですが、スパッツは使用年数が長いため、良い物を用意すればずっと使えます。たとえ穴が空いても、補修材が1000円くらいで売っているので、それで修復できます。登山で1回使用するだけなので防水だけの安価な物か、その後も何度も使う予定があるのでゴアテックスのものにするか、選ぶと良いでしょう。
ジッパー位置
スパッツのジッパーが前(靴紐側)と後ろ(かかと側)の2種類あります。登山靴を履いた後に登山スパッツを装着するのですが、経験上、前側の方が着脱がなにかと扱いが楽です。
サイズ
スパッツにはS、M、L、など複数のサイズがあるので自分の靴にあったものを選びましょう。
スパッツ(レインスパッツ)の付け方
登山初心者の方の中には、付け方がわからないかたもいるよう(向きを間違えると足引っ掛けて転倒の原因になる)ので、下記動画を参考にしてみてください。
富士登山ガイドのエキスパートの野中径隆さんによる
”登山・トレッキング用のフットスパッツの付け方”の講義
登山スパッツ一覧
登山用スパッツは、
- アウトドアメーカー製(価格:3000円程度~)
- 格安スパッツ(価格:1000円程度~)
の2つに分類できます。
アウトドアメーカー製は、軽量・高い防水性・高い透湿性・使いやすい、など工夫されています。それに比べて、ネット通販サイトで安価に販売されている格安スパッツは、価格なりの性能となっているようです。
アウトドアメーカー製スパッツ
様々なアウトドアメーカーから登山スパッツ(レインスパッツ・ゲイターとも呼ばれる)が販売されています。パッと見た感じでは似ていても、よく見るとメーカー独自の工夫が見られます。
富士山では砂走りでの靴内への小石侵入の防止のことだけ考えるならショート丈でも問題ないですが、靴周辺の汚れ予防のことを考えるなら、ロング丈がおすすめです。
2017/08/01 登山初心者と富士登山(御殿場ルート下山道)
イスカ ゴアテックス ライトスパッツ フロントジッパ-
イスカ ゴアテックス ライトスパッツ フロントジッパ-
- 生地:上部:ナイロン100%(ゴアテックス)
- 生地:下部:ナイロン100%(防水コーティング加工)
- 平均重量:170g
- サイズ:フリ-(高さ40cm)
- カラ-:ブラック・ロイヤルブル-・イエロ-・レッド・ラベンダ-
フロントジッパーで、防水透湿素材として高性能のゴアテックスを使用(生地上部のみ使用。靴を覆う黒色部分は防水コーティング)していますが、性能の割に他社に比べて価格が手頃です。
2012年から発売されていたモデルが2017年春から、ゴム紐(スパッツをつけた時に靴底をまたぐ部品)にカバーが付き、100円値上がりし、型番も変わりました。それ以外は旧モデルと一緒です。
以下、新モデルのレビューがほとんど無いため、旧モデルのamazonカスタマーレビューより抜粋。
- 富士山の大砂走りに必須(2022年10月28日):今年8月に、御殿場口起点の富士山日帰り登山に使いました。下山道は大砂走りとなっていて、ゲイターが無いと靴の中に砂や小石が入ってきます。このゲイターのお陰で靴の中に砂が入る事はありませんでした。ただ、この商品は長さが少し短めで、ガード出来るのはふくらはぎの下までです。藪の中で朝露を防ぐ目的だと、長さが不足していると思います。
サイズはレギュラーサイズ、Sサイズあります。
イスカには、より軽量で安価なゴアテックスライトスパッツもあります。レギュラータイプとミッドタイプがあります。
大手通販サイトの登山スパッツの売れ筋ランキング
大手のネットショップで販売されている登山スパッツのランキングページをまとめてみました。
ネットブランド品では、1000円程度の登山スパッツもあるようですが、ただ単に防水コーティングで透湿性が無い、すぐ壊れた、送られてくる製品によって当たり外れあるなど、レビュー評価が異なります(2017年に登山初心者と富士山を登ったのですが、1人がこの手のスパッツを購入して下山途中で壊れてました…)。中には割と評価の高いものもあるので、レビュー評価をよく読んで検討してみてください。
比較的評判が良く、構造的にも価格割に工夫されている登山スパッツを紹介しておきます。
上記のゲイターは、600Dの高強度生地を使用し、靴の下部はTPUベルトを使用していて、この価格ではかなり頑張っている構造です。レビューに自然ガイドさんの口コミあり「使用距離は百キロにもなりましたが、その驚異的な数字にも関わらず、大きな損傷は見当たりません」と絶賛しております。安価なスパッツの中ではレビュー評価も高いです。
「Azarxisゲイター」には、いくつか富士登山使用者のレビューも掲載されていました。
- 富士山御殿場口(2022年8月17日):富士山御殿道で使いました。大砂滑りの際も一切砂は入りませんでした。買って良かったです。
- 装着しやすいが…(2022年8月27日):富士山登山で初めて使用しました。砂走りでも靴の中には1粒の砂も入りませんでした🎵 装着も簡単で素早く使い勝手は良いです。ただ、靴底に回す平らな部分が岩場等では損傷が酷く傷だらけになりました。交換部品が無さそうなので使用回数も限られてくるかもです。
- 軽量で装着が簡単で使いやすかったです✨(2023年9月10日):富士登山の下山の時にとても活躍してくれました。砂利が凄くて途中で装着したのですが簡単に取り付けができました。装着後は靴に砂利が入る事なかったです。とても有り難かったです。
その他にも様々な登山スパッツがありますので、下記リンクで探してみてください。
amazon「登山用ゲイター・スパッツ」の人気・売れ筋ランキング
まとめ
- 須走ルートと御殿場ルート、プリンスルートを下山する人は登山スパッツはほぼ必須
- ロング丈のスパッツが用意するのがおすすめ
- ゴアテックスなど防水透湿素材がおすすめ
- S、M、L、とサイズがあるので自分の靴にあったものを選ぶ
- 実売価格:アウトドアメーカー製4000円程度~、格安スパッツ1000円程度~
私は2011年に購入したアウトドアリサーチのゴアテックスのロングスパッツを補修しながら現在も使用しています。
※雪山登山にも対応したモデルなので夏の富士登山にはオーバスペックです。購入して10年以上経過し、防水性はそろそろ限界かも?
装備・持ち物リスト
10年以上の登山経験を元に作成しました。安全・快適な登山の参考になれば幸いです。
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日帰り登山の場合は、パンツの裾が汚れても、下山後に着替えれば気にならないのですが、1泊以上の山小屋泊の場合はそのまま山小屋で過ごす場合は砂や泥よごれが布団や寝袋に移ることがあります。登山スパッツを装着すればパンツの裾が汚れることがほとんどありません。