2024年7月に吉田ルートの麓からの登山ルートを調査&登りました。私が登ったのは”馬返(うまがえし)”という地点からです。過去に水ヶ塚駐車場近くの須山口登山道から登りましたが、吉田ルートはある程度登山道が整備されている印象でした。
目次
吉田ルート登山地図
吉田ルートの麓からの地図は”ふじよしだ観光振興サービス”のWebサイトに掲載されている「富士登山ガイドマップ」が非常にわかりやすいです。この地図は富士山駅前の”富士吉田市観光案内所”やルート上にある”中の茶屋”や”大文司屋”にも置いてあると思います。
富士登山ガイドマップ(2024年版)
上記は2024年版ですが、おそらく今後も毎年更新されると思います。最新版は下記リンクからダウンロードできます。
登山口の位置とアクセス
五合目からの登山と異なり、吉田ルートの麓からの登山は登山起点が複数あります。そのため「どこから登るか?」を決める必要があります。
「登山スタート地点をどこにするか?」は体力やスケジュールにより変わってくると思います。車・バスで移動できる登山起点として、
- 金鳥居(かなどりい)
- 北口本宮富士浅間神社(きたぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ)
- 中ノ茶屋(なかのちゃや)
- 馬返(うまがえし)
が候補になってきます。
以下、各登山起点を紹介します。
金鳥居
(かなとりい)
金鳥居(2024年)
明治後期(1900年代)
富士山駅近くの国道138号をまたいで立っている鳥居です。金鳥居(かなどりい)は富士山に登拝(信仰的な登山)をする人びとを迎え入れる「門」として、また、俗回(日常的な世界)と神聖な富士山の「結界」として建てられています。天明八年(1788)に建てられた後、何回か建て直されましたが、現在の鳥居は、昭和三十一年(1956)に建てられたものです。一ノ鳥居とも称され、神社の鳥居ではなく、富士山という神の鳥居と考えられています。
冨士吉田市のガイドブックでは、吉田ルートの麓からのスタート地点は金鳥居となっています。
近くに「金鳥居」の焼印ができる薬局があるそうです。(壁谷薬局のようですが、対応可能時間があるようです)
関連リンク
北口本宮富士浅間神社
(きたぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ)
[標高850m]
富士山と共に1900年以上の歴史を重ねてきた富士吉田随一の浅間神社です。富士山の世界遺産の構成資産の一つである北口本宮冨士浅間神社は、富士吉田を代表する由緒ある神社です。
富士吉田市観光ガイド
太い幹の杉林に囲まれ、石灯篭が道の両脇に佇む参道を進んでいくにつれ、厳かな空気を感じるようになると「冨士山大鳥居」がお出迎え。この鳥居は木造としては日本最大級で、その荘厳な姿に思わず息を呑むことでしょう。また、参拝前に手水舎の龍の口から流れてくる、富士山の冷たい雪解け水で手を清めると、より一層気持ちが引き締まります。
拝殿は富士山信仰を感じることのできる奉納物が狭しと装飾され、本殿は細やかな技巧を尽くした見事な装飾で飾られており、歴史を感じます。その拝殿の左右には樹齢約1000年を数える「冨士太郎杉」と「夫婦ヒノキ」のご神木がそびえ、自然と歴史の雄大さと神秘を感じます。
毎年7月1日に「お山開き」が、8月26・27日には日本三奇祭の「吉田の火祭り」がこの地で行われ、短い夏山の期間を盛り上げます。
平成29年には拝殿などが新たに重要文化財に指定され、計11棟が重要文化財に指定されています。
金鳥居から約20分ほど市街地を歩くと北口本宮富士浅間神社に着きます。
[出典:北口本宮冨士浅間神社の境内地図]
神社の本殿右手奥に吉田口登山道の起点の登山門があります。
吉田ルートの登山者のルート
この登山門の奥に祖霊社があり、そこから少し歩くと車道に出ます。
車道を約5分ほど歩くと左手に”大塚丘”、右手に”吉田口遊歩道の看板”が見えてきます。
ここから、中ノ茶屋まで距離3.6km、約80分程度の緩やかな傾斜の遊歩道が続きます。車道と少し離れて並走しています。
2024年7月に訪問した感想ですが、
- 境内が非常に広く、神社内のエネルギーも良く、素晴らしい神社。
- 境内が広くて最初吉田ルートへ行く道がわからず、巫女さんに聞いた。
関連リンク
中ノ茶屋
(なかのちゃや)
[標高1,100m]
登山客を見守って300年。歴史を感じさせるお茶屋さん。吉田口登山道の基点・北口本宮冨士浅間神社の登山門から馬返しまでの中間地点にあることからこの名前が付いている中ノ茶屋は、300年以上の歴史を持つお茶屋さんです。みたらしだんごやかりんとう饅頭などの軽食のほか、土日祝日(7月13日〜8月末までは毎日)はご当地の名物「吉田のうどん」の提供も行っています。
富士吉田市観光ガイド
中ノ茶屋は、宝永4年(1707年)創業の山小屋です。2012年末に富士吉田市が買い取ったようで、現在は市が運営しています。そのため、小屋が非常に綺麗に整備されています。
2024年7月に伺ったとき、スタッフの方といろいろお話させてもらいました。
- 中ノ茶屋はどこのキャリアも電波なし
- 約20台分の駐車スペースあり
- 中ノ茶屋のバス停あり。
- 施設内にトイレ、外にも仮設トイレありました。
- 中ノ茶屋のスタッフの方に「1日にどれくらいの方が利用されるんですか?」と聞いたら、「平日で20人程度、土日は100人程度と言われていました。
- 登山利用者の他に「近くに金運神社があってそこの道路をバンバン高級車が通るんです」と思わぬ話を聞いた。金運神社こと「新屋山神社(あらややまじんじゃ)」は、日本三大金運神社の1つと呼ばれている。(後で参拝しました)
関連リンク
2024.08.12
新屋山神社ー富士山麓にある日本三大金運神社と呼ばれる神社
富士山の麓からの吉田ルートの各地点を事前に調査した際、中ノ茶屋のスタッフさんから「そこの道路を進むと金運神社があるんです。高級車が...
馬返
(うまがえし)
[標高1,450m]
中ノ茶屋から3.8kmほど林道を進んだところに、”馬返”があります。ここから先は険しくなって馬を引くことができず、ここで馬を返したことから”馬返”の名がつきました。馬を降りた人々は、この場所にあった茶屋で休憩し、道中の身支度を整えたそうです。
富士山は麓から山頂までの間を三区分し、それぞれ草山(草原)、木山(森林)、焼山(裸地)と呼ばれ、ここは、草山と木山の堺にあたることから、富士山の信仰領域の起点とされた場所でした。
馬返を少し登った所に”大文司屋(だしもんじや)”の山小屋があります。
- 約30台分の駐車場があります。
- 車・バス移動できる最終地点です。ここからは登山になります。
関連リンク
以上、麓からの登山起点をご紹介しましたが、さて、どこから登りましょうか。実はまだ重要な内容を記載していません。それは”熊の出没状況”です。
熊(ツキノワグマ)の出没状況
(2024年度情報)
中ノ茶屋の注意案内
実は、樹林帯の始まる”北口本宮冨士浅間神社”から”馬返”までは、熊が出没しているそうです。今回、富士山駅前の観光案内所、中ノ茶屋、大文司屋の方に熊の出没状況を確認したところ、
- 北口本宮冨士浅間神社の裏側で熊が出没
- 中ノ茶屋で登山者から「熊を見た」の報告が複数ある
- 大文司屋の主人は、「馬返より麓は今年は熊が出没していると聞いているが、馬返より上は聞いたことが無い」
とのことでした。
実際、北口本宮冨士浅間神社を過ぎた遊歩道から「熊出没注意」の看板・張り紙が始まるようで、その警告は馬返まで続いていました。馬返から先の登山ルートでは見なかったです。
現状、熊による被害は無いようですが、吉田ルートを麓から登る場合、馬返より下の出発だと、熊出没のリスクが拭いきれません。金鳥居~馬返の間から出発される方は、熊対策として、
- 熊鈴を付ける
- ラジオの携行
が強く推奨されます。
最新の出没状況は、富士吉田市で公表されていますので、ご確認ください。
関連リンク
麓からの吉田ルートの
特徴(長所・短所)
2024年7月に麓の各地点を事前調査し、馬返⇒吉田ルート六合目まで登ってきましたので、その体験を踏まえて特徴を記載します。吉田ルートの特徴を ○ or △ で掲載してみました。
- 各合目で、その昔営業してた山小屋の跡地や建物や富士吉田市が設置した案内看板が充実していて、古の富士登山の歴史を体感できる。
- 案内看板に表示されている昔の写真が、非常に見応えがあり、富士登山の伝統や歴史を非常に感じた。
- 登山道の整備はある程度行き届いていて、道迷いするような場所もほぼ無く、安心して登れた。(五合目までの登山ルートは、同じような傾斜の道が続くため、途中で高尾山6号路や筑波山登ってるかのような感じがした)
- 麓の吉田ルートは、トレラン(山道を走る競技)の練習コースに利用されている方が多いようで、登山者は少なかったものの、トレランで走り抜けていく方(登る方、下る方)がそこそこいて、程よい人通りだった。(富士登山競走の開催まで多いとの話も聞いた)
- 麓(中ノ茶屋or馬返)から山頂まで登ると「富士山登山認定書」、麓(中ノ茶屋or馬返)から五合目まででも「富士山1/2登山認定書」を発行してもらえる。
- 一般的な五合目からの登山と違い、「どこから登るか?」「どこまで登るか?」「登山口までの移動手段はどうする?」「マイカーの駐車場は?」「バスの発車時刻は?」「タイムスケジュールは?」など、登山計画を立てるのに時間・手間が結構かかる
- 今回、富士急バス利用者が使える富士山駅近くにある「富士山駅パーク&ライド」の無料駐車場に車を停めたが、前日(平日)に下見に行ったら9割ほど埋まっていて、登山当日も平日9時ごろには8割ほど埋まっていた。(土日だと空きないかも)
- 富士山駅から馬返まで運行している”馬返しバス”の発車時刻が、朝9:30で、次の便は15:00の1日2便のみで、朝便逃すと計画破綻する。バス移動だと富士山駅を朝9:30発で、馬返の到着が10:00になり、登山開始時間としてはちょっと遅くなる。因みに乗車料金は500円。
- 馬返の無料駐車場は、10時ごろに馬返しバスで到着したら、約30台分の駐車スペースが平日で満車状態だった。平日・土日で馬返までマイカー移動する方は早めに行かないと停められないかも。
- 営業している山小屋が、馬返の大文司屋の次が五合目の佐藤小屋になり、その間に飲み物等を買える売店・小屋がない。そのため、飲水は1.5リットル程度携行したが、五合目時点で1リットルほど飲んでいたので、それくらいの水分を持つことを推奨。
- 馬返の標高が1,450mとそれほど高くないため、夏だとそんなに涼しくない。五合目までずーっと樹林帯で風の影響も受けにくい。
- 事前に予想していたが、やはり虫が多い。虫除けスプレー必須! タイツの上からアブに噛まれました。途中、休憩しようと足をとめると、(虫除けスプレーを振りまきまくっても)すぐに虫(アブなど)が集まってくるため、虫に追われるように登ることになった。麓ルートは春~秋と登れるので、夏よりも虫の少ない時期の方が楽しいかも。
- 馬返から一合目、二合目・・・と各合目で史跡(山小屋があった空き地、倒壊した山小屋など)がありましたが、休憩ベンチが1個も無かったのに驚いた。(夏は虫が寄ってくるので、そんなに休憩できないかもですが)
関連リンク一覧
麓からの吉田ルート登山で事前に確認したい関連リンクを以下にまとめました!
山小屋・施設等
- 金鳥居|【公式】富士吉田市観光ガイド
- 北口本宮冨士浅間神社【公式】
- 中の茶屋|【公式】富士吉田市観光ガイド
- 大文司屋 【公式】– 富士山吉田口馬返し
駐車場・バス
- 「富士山駅パーク&ライド」駐車場
- 富士急 馬返バス
※お祭り等で全日運休となる日があります。
富士山登山認定書
熊(ツキノワグマ)の出没状況
関連動画
麓からの吉田ルートを登った方の動画が複数Youtubeにアップされています。その中でも参考になりそうな動画をピックアップしました!
最後に
今まで五合目からの4大ルートはすべてのぼってきましたが、吉田ルートの麓からの登山は虫が多かったなど気になる点も複数ありましたが、やはし初めて登るので非常に新鮮でした。五合目からの登山と違い、利用者(登山者)が少ない分、登山環境が潤沢とはいえませんが、しっかりと登山計画を立てて天候・体調に恵まれれば思い出深い登山になると思います。以上、ご参考になれば幸いです☆
装備・持ち物リスト
10年以上の登山経験を元に作成しました。安全・快適な登山の参考になれば幸いです。
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このページでは、吉田ルートの麓ルート概略図、登山口までのアクセス情報、登山地図・マップ、特徴(登山口(五合目)標高、歩行距離、所要時間・コースタイム、山小屋数)、関連動画の紹介、登山時に撮影した写真、注意点などについて掲載、解説します。