- 慣れれば、足にかかる負担を手に分散できるだけでなく、バランスがとりやすくなるので転倒防止に役立つ
- 脚力に自信のない方や、膝が弱い方は、トレッキングポールがおすすめ(特に下り)
- 金剛杖、T字型(1本)、I字型(2本)では、I字型(2本)が断然バランスがとりやすい
以下、詳しく解説しています。
目次
はじめに
トレッキングポールはあくまで2足歩行のサポートに使う道具です。しっかりと身体の軸を2本足で整えた上で、トレッキングポールを活用した方が、安全かつ軽快に登れます。近年、登山業界にトレッキングポールが普及し、多くの山々で使用する登山者を見かけるようになりました。一方、あまりにトレッキングポールに頼りすぎる方も散見されるようになりました。
御殿場ルートを下山
トレッキングポール(ストック・ステッキ)とは?
トレッキングポール(ストック・ステッキ)とは、登山で使う杖です。この道具を使うことで、足にかかる負担を手に分散できるだけでなく、バランスがとりやすくなるので転倒防止に非常に役立ちます。
トレッキングポール・ストック・ステッキの選び方
T字型
I字型
トレッキングポール(ストック)にはT字型とI字型の2つの種類があります。
以下、個人的な感想です。
トレッキングポールなし
足のみはすべての体重が足にかかるので、トレッキングポールを使う登山に比べて足が疲れやすく、疲労時にふらつきやすく、特に下りでは膝への衝撃が大きくなります。
登山初心者の方は、膝や足の筋肉への負担を軽減する歩行方法を知らないため、特に下りでは勢いを抑制する筋力と膝に負担がかかり、膝痛を引き起こしやすくなります。また、常に足2点でバランスをとらねばならないため、より筋力やバランス力が求められます。
基本的に、登山初心者の方や、脚力に自信のない方、ひざに不安を抱えている方は、トレッキングポールを使うことをおすすめします。
ただ、いままでいろんな方と一緒に山に登って気づいたのですが、トレッキングポールを使い慣れていない方の中にはポールが無いほうが歩きやすい方もおられるため、事前のトレーニング時にご自身がどのタイプか実際使ってみて判断されるのが最良です。
金剛杖
金剛杖は古くから使われている伝統的な登山道具です。杖に直接、焼印を押すことにより思い出にもなります。ただ、岩場のあるルートでは収納・短くできない金剛杖があると登りにくいです。
金剛杖は登山口にある売店で購入することができます。金剛杖を使ったら登山が楽になるかというと、上りは△、下りは○というところでしょうか。平坦な登山道や下山ではバランスをとるのに便利なのですが、登山道にある両手を使うような岩場では重く収納できない金剛杖はかなり扱いにくいです。
友人が吉田ルートの岩場で 「この金剛杖・・・ここで捨てたい。」と放った言葉が今も忘れられません。どれどれ私に貸してみなさいと金剛杖を代わりに持ってあげましたが、岩場では友人の気持ちが理解できました。両手を使いたいのに、木でできたずっしりと重い金剛杖は片手がふさがってしまうだけでなく、その長さゆえ周囲の登山者に当たらないように気を使わねばなりませんでした。
下りではある程度バランスをとるのに役立ちましたが、トレッキングポールのように握りやすく滑らないグリップがない木の棒なので、しっかりと体重をかけにくく、重かったです。
吉田ルート上り、富士宮ルート共に岩場が多数あります。それに比べると須走ルート上り(八合目付近まで。八合目からは吉田ルート上りと合流するため)と御殿場ルートは岩場少なくなります。上記の内容を踏まえ、それも修行と思える方、古くからの富士登山スタイルで登りたい方向けです。
T字型(1本)
金剛杖と違い軽量でコンパクトに収納できるので重宝します。値段も1本ということもあり、手に入れやすい価格(数千円)です。
T字型(1本)のトレッキングポールは傾斜のきつい登りでは体重をかけにくいためそれほど役に立ちません。下りでは、片側1本のため登山のリズムがあまりでません(ポールを握っている方の手が常に前にでるため、体の向きが正面ではなくポール握った方に傾きます)が、上部に体重をかけやすく、下山する時は大いに役立ちます。
経験上、登山時間の長い富士山ではT字型より、両足の負荷をバランスよく軽減するI字型の方がおすすめです。ただ、握力や脚力が弱ったご年配の方には、容易に体重を預けられるT字型を好まれる方も多いようです。(高尾山でT字型ストックを使われているご年配の方が「体重をかけやすい」と言われていました)
I字型(2本)、ダブルストック
足とあわせて4つの支点になるため非常にバランスがとりやすく、慣れれば登り下り共に非常に歩きやすくなります。断然おすすめです!
私がこれをはじめて使ったときに衝撃を受けました。「なっ、なんだこれは!ものすごく登りやすい!」と。もともとT字型(1本)を使用していたのですが、さびて使えなくなってしまいました。そこで買いなおそうとしていたら、友人から「ぜったいI字型(2本)がいいですよ。トントントンって感じで楽ですし。」と言われてしまいました。
「え~、それホント?なんかちょっと信じられないな~。」と言ったはいいものの、どうしようかと悩んでいました。そもそも両手がトレッキングポールでふさがってしまうことにも抵抗がありました。最終的に、友人の助言を信じてI字型(2本)を購入してすぐさま近場の山で使ってみたのです。
実際に使ってみて正直感動しました。もう、登りやすいのなんの。足とあわせて4つの支点になるため非常にバランスがとりやすいのです。このお陰で、強風や足場が悪い場所でも転倒の不安がなくなりました。ストラップにしっかりと手を入れてグリップを握ってポールを適切な長さに調節してあげれば、登り下り共に非常に歩きやすくなります。それ以来、周囲の人にもI字型(2本)のトレッキングポールを勧めています。
トレッキングポール2本で御殿場ルートを下山
最初は疑問に感じる方も多いのですが、実際使うようになると「 これほんと良いね!教えてくれてありがとう! 」という感じで、みなさんに喜ばれることが多いです。私自身も、近年の富士登山ではこのタイプのトレッキングポールを携行しています。
素材
トレッキングポールに使われている素材は、主に
- アルミ(厳密にはアルミニウム合金、ジュラルミンとも言われる)
- カーボン
の2種類あり、それぞれの特徴が違います。
アルミ製とカーボン製の両方のトレッキングポールを使った経験があるので、それを踏まえて解説します。
アルミニウム合金
トレッキングポールの多がアルミニウム合金が使われています。軽量で強度もあり、粘り(しなり)もあります。
通称”アルミ”と呼ばれますが、正確にはアルミニウム合金(亜鉛、マグネシウムなどが混ざっている、超々ジュラルミンとも呼ぶ)が使われています。
北アルプスの縦走登山中に岩の隙間にポールが入って強くしならせてしまい、ポールが曲がってしまったことがあるのですが、曲がってもある程度力で戻すことができます。(完全にまっすぐに戻すのは難しいです)
素材的には多少荒い使い方にも耐えますが、濡れたあとにしっかり乾かさずに放置してしまうと白サビ(白い粉がでる)がでて、トレッキングポールの締りが悪くなります。そのため、雨の日などに使って濡れた場合、使用後に各ポールを分解してしっかり乾燥させるのが長く使うポイントです。
カーボン(炭素繊維)
アルミよりも軽量なのがカーボン製ポールです。錆びは発生せず、アルミ製より数割の軽量化できますが、価格は上がります。
最初はアルミ製のポールを使っていましたが数年に及ぶ過酷な山行の使用で曲がりやサビで使いにくくなったため、次にカーボン製を購入しました。実際に使ってわかったのですが、登山でトレッキングポールを使う時、持ち手部分を支点に振り子のように前後に振るため、僅かな軽量化でも体感的には重量以上に軽くなったように感じました。また、カーボンは錆ませんので、アルミほど気にしなくても良く、折れなければ結構長く使えることがわかりました。(※連結部に金属を使用していることが多く、使用後はしっかり分解して乾かすのが基本です)
価格が高いこと以外すべてが優秀に思えるカーボンですが、弱点もあります。それが、強いしなりが加わると折れてしまうことです。アルミポールであれば、折れることは滅多になく、曲がってしまった状態でも使用できます(短く収納できなくなります)が、カーボンは折れてしまいますので使い物にならなくなります。そのため、カーボン製のトレッキングポールを使うときは、無理な負荷(岩に挟まって思い切りしならせてしまう、など)がかからないよう配慮して使う必要があります。
2014年に購入したカーボン製のトレッキングポールを今(2023年時点)でも使用しています。カーボン自体は全く問題ないですが、グリップなどその他の部分が劣化してきてますね。
トレッキングポールと富士登山の思い出
以下、興味のある方はご覧ください。
T字型の トレッキングポールはグリップがT字型になっていて、一般的に1本で使用します。I字型のトレッキングポールはスキーのストックと同じくグリップがI字型になっていて、一般的に2本で使用します。
私は富士山を、トレッキングポールなし、T字型(1本)、I字型(2本)のそれぞれで富士山に登ったことがあります。(あと、友人から借りた金剛杖で一部分だけ登ったこともあります。)
< 登りやすさレベル >
⇒ I字型(2本)
⇒ T字型(1本)
⇒ トレッキングポールなし、金剛杖